ワンルーム価格は全国的に上昇傾向にあり、家賃も値上がりしています。特に人口が増加している東京のワンルームは、投資用物件として人気が高まっています。ワンルーム投資は少額から始められ、銀行から融資を受ける際は購入した物件を担保にするので、小さいリスクで始められるのがメリットです。
しかし、ワンルーム投資が盛り上がりをみせる一方で、利回りは減少傾向にあり儲けを出せない人も多くいます。「ワンルーム投資は儲からないからないからやめておけ」とささやかれることさえあるのです。
本当にワンルーム投資は儲からないのでしょうか。
データをもとにワンルーム投資の市場動向を分析します。
ワンルーム投資は儲からない?市場の動向をチェック

マンションは戸建てに比べて価格の上昇率が高く、将来にわたって大幅な下落が起きないことが見込まれるため、投資用物件として注目を集めています。

出典:国土交通省:不動産価格指数(住宅)(令和v5年4月分・季節調整)
国土交通省が発表した全国の不動産価格指数で、2010年を100とした場合2023年4月の戸建てが117.5に対してマンションは192.0と圧倒的な価格上昇を見せています。
また、総務省が令和2年に行った国勢調査によると、世帯人数別の世帯数では1人暮らし世帯がもっとも多く、さらに増加傾向が顕著であるため、ワンルームの需要は今後も高まっていくことが予測されます。

総務省統計局:令和2年国勢調査 人口等基本集計結果
ワンルームの家賃相場は上昇傾向にある
ワンルーム投資で利益を出すためには安定的な家賃収入が重要です。
ワンルーム投資では家賃収入によってローンの返済や固定資産税、修繕積立金などの経費を支払わなければいけないからです。
東京圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)では、コロナ禍を含む10年間の家賃相場は上昇を続けており、今後も大きな値下がりは考えにくいのが現状です。
しかし、個別の物件では築年数によって家賃は徐々に下落します。

公益財団法人不動産流通推進センター: 2023不動産業統計集(住宅新報による)
ワンルーム投資で失敗しないためには、年数が経過し物件の価値が下がったときでも、家賃収入が諸経費を上回る物件でないと採算が取れないのです。
ワンルームの利回りは減少している
マンション価格の上昇率は戸建てに比べると高く、家賃相場も値上がりしているのにワンルームの投資の利回りは減少傾向にあります。
2023年4月の調査では東京のワンルーム投資の利回りは3.8%と4%を割り込んでいます。

日本不動産研究所:「2023年4月不動産投資家調査」
利回りの計算式は、以下のとおりです。
家賃収入が高く物件価格が安いほど利回りは高くなりますが、現状ではワンルーム価格の上昇に家賃の上昇が追いついておらず、利回りの下落が起きているのです。
ワンルーム価格の高騰に対して家賃の上昇率が低い理由はいくつか考えられます。その一つに購入には住宅ローン減税や低金利政策などの行政の手厚いサポートがあるのに対し、賃貸にはそれに変わる優遇措置が取られていないため、物件価格の上昇圧力の方が大きいことがあげられます。
利回りの低い物件が増加傾向にあるため、ワンルーム投資が儲からないといわれる要因になっています。
ワンルーム投資が儲からない原因4つ

ワンルーム投資はサラリーマンや公務員が信用資産を使い、金融機関から融資を受けて投資用物件を購入します。購入した物件から得られる家賃収入でローンを返済し、実物資産を手にいれる投資手法です。少額から始められますが、リスクが小さい分大きく儲けることはできません。
しかも、長期で運用するのが基本であるため、その間に物件の劣化や社会情勢の変化などにより、少ない利益をさらに減少してしまう可能性があるのです。
このような特徴をもつワンルーム投資の儲けが出にくい原因について詳しく解説します。
1.ワンルーム投資はローリスク・ローリターン
ワンルーム投資で得られる月々のキャッシュフローは、順調に運用できたとしても月数千円から数万円です。なぜなら毎月得られる家賃から以下の費用を支払わなければならないからです。
- 借入金の返済
- 火災保険料
- マンションの管理費
- 固定資産税・都市計画税 など
ワンルーム投資は家賃収入で儲けを出すものではなく、長期で運用したあとに実物資産を手にすることが目的の投資モデルです。そのため、長期で運用を行っている間に家賃が費用を下回ってしまうことで、月々の運用結果が赤字になってしまい、ワンルーム投資は儲からないというイメージが広がっているのです。
2.ワンルーム投資は空室リスクが高い
不動産投資は空室になって家賃収入を得られないというリスクをはらんでいます。
2021年の全国の賃貸物件の入居率の平均は96.2%で、年間2週間程度の空室が発生しています。首都圏や関西圏など大都市ほど空室の割合は低くなっています。

日管協第26回賃貸住宅市場景況感調査:「日管協短観」
アパート経営やマンションの一棟所有など多数の部屋を持っていると、空室リスクは分散されます。
しかし、ワンルーム投資では基本的に1室しか所有していないのでリスクはゼロか1しかなく、入居者がいない期間は家賃収入が全くなくなってしまいます。その場合、投資家はワンルームにかかる全ての費用を自ら負担しなくてはいけません。
3.ワンルーム投資は金利の上昇リスクがある
ワンルーム投資において金利の上昇は、ローンの返済額に影響を与え利益が減少する要因です。
金利上昇は0.1%でも返済額が大きく変動します。
低金利政策は今後しばらく続くことが予測されますが、物価高騰などの長期的な視点で考えると、金利上昇の可能性は大いに考えられます。
不動産投資では多くの場合変動金利でローンを組むため、将来的な金利の上昇リスクを視野に入れて、物件の売却時期などの出口戦略を考えなければいけません。
4.ワンルーム投資は築年数で家賃が下落する
ワンルームの家賃は一般的に築年数に応じて下落するといわれています。そのため、家賃は入居者が入れ替わるごとに下落して収益は悪化します。
家賃の下落幅が一番大きい期間は新築から約10年間で、そのあと緩やかに下落率は減少します。築20年を過ぎると下落率はさらに減少します。このことから、ワンルーム投資のために高額な新築物件を購入するメリットは少ないと考えられます。
家賃の下落リスクを考えれば、築10年以上の物件を購入する方がより高い利回りを得やすいです。
ワンルーム投資は築年数で物件価格の変動がある
ワンルームをはじめとするマンションは築年数によって価格が変動します。

不動産流通機構:「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2021年)
物件価格の変動はワンルームの売却という出口戦略に大きく影響します。ワンルームの多くは10年をさかいに買取価格の評価が下落します。
また、20年を過ぎると物件に金融機関が融資を行わなくなることがあるので、さらに価格は下がります。築30年を過ぎた物件は金融機関の融資がつかないため、キャッシュで購入する人を探さなくてはいけません。
このように、売却のタイミングが一定期間を超えると物件の価格は下がり、販売戦略も変わります。ワンルーム投資は、物件の売却による出口戦略が重要であるため、どのタイミングで売却するのが得策かを考えることが必要です。
ワンルーム投資の儲かる・儲からないは出口戦略で決まる

ワンルーム投資は家賃収入から大きなキャッシュフローは得られませんが、物件の売却による出口戦略は儲かるか儲からないかに大きく影響します。すでにワンルーム投資が儲からないと感じていても物件を高く売却できれば、トータルで損をすることを免れるかもしれません。
ワンルーム投資で損を取り戻すためには、どのような手順で売却をすすめればよいのでしょうか。
出口戦略に必要な売却知識と注意点について解説します。
ワンルーム投資は売却による利益の確定が重要
ワンルーム投資は仮に月々の収支で赤字になっていても、物件の売却によりトータルで儲けを出すことが可能です。
ワンルーム投資ではある一定期間保有すると、物件価格がローン残高を上回り含み益が発生します。

物件価格は築年数によって変動があるので、売却はもっとも利益のでるタイミングをはかる必要があります。
ワンルーム投資には2種類の売却方法がある
ワンルームを売却する方法は仲介と買取の2種類あります。仲介は不動産仲介業者が間にはいり、市場で売却を行ってくれます。買取は不動産会社が直接買い取る方法です。
仲介のメリットはワンルームを市場に売り出すため、高値で売却できる可能性があります。デメリットは売り出しから売却までに時間がかかることと、成約時に仲介手数料が発生することです。
仲介手数料の上限は、次のように法律で決められています。
買取のメリットは仲介に比べて売却期間が短いことと、仲介手数料がかからないことです。買取では物件の査定額を算出し、売主がその価格に応じれば、その場で契約が成立することもあります。
デメリットは市場で売却するよりも、価格が低くなることです。
ワンルーム投資の売却査定は最低3社おこなう
ワンルームをより高値で売却するためには、仲介、買取ともに複数の査定を受けなければいけません。複数の査定を受けることで、所有するワンルームのおおよその市場価値を知ることができるからです。
1社のみの査定では不動産会社のいいなりで物件を売却してしまう恐れがあります。
査定は少なくとも3社以上受けてください。
ワンルーム投資では物件の所有期間によって売却益の税率が変動する

ワンルームの売却で利益が出た場合、物件の所有期間によって税率が大きく変動するので注意が必要です。
不動産物件を売却する場合、売却した年の1月1日の段階で、所有期間が5年以下の場合は短期所得税率39.63%が適用され、5年より長い場合は長期譲渡所得税率20.315%が適用されます。
所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 30% | 0.63% | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 15% | 0.315% | 5% | 20.3155 |
長期譲渡所得か短期譲渡所得かで税率が倍近く変動してしまいます。
ワンルームを売却するタイミングが短期譲渡にあたるのか、長期譲渡にあたるのかは必ず確認しておく必要があるでしょう。
まとめ| ワンルーム投資では早い段階で投資マンション専門会社に相談する
ワンルーム投資は出口戦略の立て方によって、損を回避し儲けを出すことが可能です。家賃による収支で赤字になっていても、物件を適切な時期に適切な方法で売却すれば勝ち目は残っています。そのためには、投資マンション専門会社に早めに相談し、的確なアドバイスを受けることが必須です。
ワンルームの出口戦略は、これからの家賃収入の見通しや物件の築年数による価格の推移、所有期間などさまざまな要素で売却のベストタイミングが異なります。
ワンルーム投資は儲からないと1人で悩まずに、投資マンション専門会社のサポートを受けて状況を改善しましょう。
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