ビジネスシーンで好印象を得るには、適切なメンズスーツの選び方と着こなしが大切です。
サイズがピッタリで仕立てのよいスーツに身を包むと、上品な雰囲気が醸し出されて信頼感がアップします。
本記事では、正しいサイズフィッティングの方法とカラーが与える印象について解説し、見栄えを左右する仕立てのポイントもお伝えします。
スーツの正しい選び方をマスターすれば、商談や会議、プレゼンテーションでも自信を持って臨めるうえ、上司や取引先からの評価もアップするでしょう。
失敗しないスーツ選びを、メンズファッション歴28年のプロが、具体的でわかりやすくご案内します。
正しいスーツ選びのポイント

ビジネスシーンにおいて、スーツは単なるファッションの枠を超え、信頼性や清潔感を左右する重要なアイテムとして捉える必要があります。
適切な場面で最適な印象を与えるためのスーツ選びのポイントは以下の通りです。
あなたに合ったサイズを選ぶ
スーツを選ぶ際、もっとも重要なのはサイズです。
シワや汚れがなくても、サイズが合っていなければだらしなく見えてしまいます。
メンズスーツは既製品でも幅広いサイズ展開があるため、自分に合った一着を見つけやすいアイテムです。
しかし、多くの人は「自分にぴったりのサイズ」が何かを正確に把握していません。
そのため、販売員に相談しながら選ぼうとしても、店舗側は在庫をできるだけ抑えたい、手間やコストを減らしたいといった事情から、手元にあるサイズのみで販売し、お直しを最小限に留めようとするケースが少なくありません。
その結果、サイズが合っていないスーツを勧められてしまうケースもあります。

こうした失敗を避けるには、店舗へ行く前に「サイズフィッティング」の基本知識を身につけておく必要があります。
自分がどのようなシルエットで着たいのかを明確に伝えられれば、販売員も適切なサイズやお直しの提案をしてくれるはずです。
サイズフィッティングの知識は、ビジネスマンがスーツを選ぶうえで必須の項目といえるでしょう。
見栄えを左右する仕立て
よい印象を与えるスーツを選ぶには、仕立てが重要です。
とくに確認すべきポイントは以下の2点です。
- 前肩縫製であること
- 毛芯仕立てであること
スーツは平面の布を立体に仕立てるため、職人が特別な裁断を施し、ミシンや手作業で丁寧に縫製します。
丸みを出すには縫製の過程で何度もプレスをかける必要があり、ほぼハンドメイドに近い手間がかかるため、その分だけ価格が高くなります。
たとえば、肩のラインに沿って立体的に縫い上げる前肩縫製や、前身頃をより美しく見せるために馬の尾の毛で作られた芯地を使う毛芯仕立ては、どちらも手間とコストがかかる高級仕様です。
しかし、これらを備えたスーツでも予算3万円程度で購入できるコスパの高い商品が数多く存在します。
したがって、スーツを選ぶ際は前肩縫製と毛芯仕立てが施されたコスパの高い一着を選ぶようにしてください。
目的に合わせた色の選択
ビジネスシーンで選ぶべきメンズスーツの色は、主に紺・黒・グレー・茶の4色です。各色が与える印象を理解し、場面に合わせて使い分けることが重要です。
紺(ネイビー) | 誠実さや安定感を演出します。商談や営業で信頼感を高めたいときに最適 |
---|---|
黒 | フォーマル感が強く、重要なプレゼンや冠婚葬祭など、格式のある場面でも威厳を保てる |
グレー | 柔軟性と知的さを感じさせるため、社内ミーティングや事務作業など「堅すぎず、だらしなくもない」中間的な印象 |
茶色 | 親しみやすさや暖かみがあり、社外イベントやカジュアルな打ち合わせで自然なコミュニケーションを取りたいときに適している |
色の持つパワーを踏まえ、目的や場面に合わせて最適な一着を選べば、ビジネスシーンでの印象を強化できます。
メンズスーツの正しいサイズフィッティング

メンズスーツのサイズは身長とウエストで大まかに決まります。
しかし、そのスーツが実際に自分に合っているかどうかを判断するには、試着してジャケット5箇所とスラックス3箇所の計8箇所のフィッティングを確認する必要があります。
スーツ選びで、具体的にチェックするポイントは、次の通りです。
1.肩幅

スーツの見栄えを左右する重要な要素が肩幅です。
上着を着用した状態で両肩を親指と人差し指でつまみ、人差し指の第一関節がわずかに入るだけの余裕があるのが理想的なフィット感です。
この微妙な加減は自分だけでは確認しづらいため、試着時には必ず販売員に肩幅が合っているかを見極めてもらいましょう。
肩パッドと肩先がぴったり一致していないと、ジャケット全体が不自然に見えてしまいます。
2.胸まわり
スーツを着た際に胸まわりが適切であるとは、襟が体から浮かず、前身頃が体に沿って自然なラインを描いている状態を指します。
もし、胸囲が合っていないと襟元が浮き、ジャケット全体のシルエットが崩れて見えてしまいます。
スーツの上着を試着する際に、胸部にシワや突っ張りが生じていないか、襟が首にしっかりフィットしているかを確認しましょう。
胸まわりに違和感を覚えた場合は、サイズをワンサイズ上げるか、別ブランドの製品を試して大きさを変更する必要があります。
3.着丈
ジャケットの着丈は、お尻の一番下がわずかに隠れるか、お尻の半分程度まで覆う長さが理想です。
このバランスによって脚長効果が生まれ、全体のシルエットがスマートに見えます。
着丈が長すぎると重心が下がり、足が短く見える原因になりますし、逆に短すぎると腰高に見え、スタイルが崩れてしまいます。
鏡の前で着丈を確認し、長さが適切であるかを確かめてください。
4.袖丈
袖丈は、手首のくるぶしが隠れるくらいが最適です。
袖口からシャツの袖が約1.5センチ見えるのが目安となるため、腕を自然に下ろした状態でチェックします。
袖が長すぎる場合は、お直しで短く調整できるので、販売員に相談してください。
逆に袖が短い場合でも、1センチ程度であれば裏地を利用して長さを伸ばせる場合もあります。ただし、製品によっては袖を伸ばせないものもあるため、お直し可能かどうか販売に聞いてみましょう。
5.前身頃
前身頃は、ジャケットのボタンを留めたときに横方向に不自然なシワが出ず、窮屈さが感じられない状態がよいでしょう。
過去には握りこぶしひとつ分のゆとりが求められていましたが、現在はスリムシルエットのスーツが主流になっており、握りこぶしが入らなくても問題ありません。
ボタンを留めたまま前身頃のラインを鏡で見たとき、体に適度に沿いつつも動きやすいフィット感であるかが重要です。
6.ウエスト

スラックスのウエストは、お腹とスラックスの間に手のひら一枚が入るサイズがおすすめです。
ウエストに適度な余裕がないと、座ったときに苦しくなったり、見た目がきつく見えたりするためです。
既製品のスラックスは一般的に、±3センチ程度までサイズ直しが可能です。
スラックスの試着時、ウエスト部分に手のひらが入るかを確認し、合わないときはお直しで調整してもらいましょう。
7.太もも
スラックスの太ももは、手のひらで一掴みできるぐらいの余裕をもたせる必要があります。
太ももがピッタリしすぎるスラックスでは、ビジネスシーンでの見た目が窮屈に映るうえ、動きづらさが生じるためです。
太ももにラインがくっきりと出るタイト過ぎるスラックスは、会議や移動時に動きを制限し、座ったときにシワが目立ってだらしなく見えることがあります。
そのため、手のひら一掴みできる程度のゆとりがあれば、立った状態でも座った状態でもシルエットが崩れにくく、見た目も自然で動きやすさも確保できます。
8.裾丈
裾丈は購入後にお直しで調整するのが一般的で、試着時に販売員に測ってもらい、適切な長さを決める必要があります。
裾丈が合っていないと、足元でもたついたりシルエットが崩れたりして見栄えが悪くなります。
スリムなスラックスの場合は特に裾幅が狭いため、長すぎると足下で余分なシワが出てしまいます。
裾幅が広いスラックスでは多少長めでもきれいにクッションが生まれるため、その違いを踏まえた調整が必要です。
スリムな裾幅のスラックス | 「ハーフクッション」(靴の甲に軽くかかる程度)くらいの短めにすると見た目がすっきりする |
---|---|
裾幅が広いスラックス | 「ワンクッション」(靴の甲に軽く乗る程度)を作ると自然なシワで美しく見える |
試着時に販売員が裾丈を測る際には、自分の好み(ハーフクッションかワンクッションか)を伝え、細かな調整を依頼しましょう。
メンズスーツの印象をアップに欠かせない上質な仕立て

スーツ姿をより上品に見せるためには、仕立てのよさが重要です。
しかし、仕立てのよいスーツは、高額になりがちです。
そこで、コスパがよく見栄えも美しいスーツを選ぶために、以下の2点に絞って検討して下さい。
前方縫製

前方縫製は、日本人の体型(欧米人に比べて肩先が前に出ている)を踏まえた仕立てです。
立体的に肩先を前方へカーブさせることで、肩のラインが自然に沿い、着心地と見た目が大きく向上します。
さらに、この仕立てを採用したスーツは背中側に「ツキジワ」が生じにくいのも特徴です。
また、上着を着たときの重心が肩ではなく首の後ろにかかるため、長時間着用にも適しています。
毛芯仕立て

毛芯仕立てとは、ジャケットの前身頃と裏地の間に馬の尾の毛で作られた芯地を挟み込む仕立て方法です。
毛芯を用いることで、着用したときに胸部からウエストにかけて美しい立体的なラインが形成され、上半身のフォルムが上品に仕上がります。
一方、一般的な既製品スーツで多く採用されている接着芯は、化学繊維の芯地に糊を塗布し、高温のアイロンで表地に貼り付ける手法です。
接着芯は毛芯に比べて軽量かつ柔らかいというメリットがあるものの、胸部からウエストにかけての立体感を生むことはできず、結果としてシルエットの美しさには差が生じます。
このように、毛芯仕立てと接着芯ではスーツを着用した際の体のラインに大きな違いがあり、より上品で端正な印象を求めるなら毛芯仕立てのスーツを選んでください。
スーツの色で変わるあなたの印象

色にはそれぞれ独自の力があり、その特性を理解すれば、自分が目指すイメージをスーツで自在に演出できます。
ビジネスシーンで定番となる以下の4つのカラーが、相手にどのような印象を与えるのかを解説します。
紺

紺は「後退色」と呼ばれ、同じ位置にある他の色のものより後方に見えるカラーです。
そのため、謙虚で誠実な印象を与える性質を持っています。
ビジネスにおいて紺のスーツを着ることは、相手への敬意を無言で表現します。
誠実さを伝えたいときには、紺のスーツを選ぶとよいでしょう。
黒

黒は「重さ」を象徴する色であり、視覚的に強さやクールさを感じさせます。
黒いものは同じ重さでも重く見えるため、黒のスーツを着ると自信や行動力を無言でアピールできます。
自身の有能さを印象づけたい商談やプレゼンの場面では、黒のスーツが効果的です。
グレー

ビジネスシーンで落ち着きや冷静さ、謙虚さを演出したいときには、グレーのスーツが最適です。
グレーは黒の重厚感と白の軽やかさを併せ持つ中間色であるため、自己主張を抑えた控えめな印象を与えます。
その曖昧さゆえに、安心感や協調性を感じさせます。
初対面で相手と信頼関係を築きたいときや社内の意思決定会議などでは、グレーのスーツを着用すると「冷静に話を聞き、調整役として活躍できる人」というイメージを与えられます。
落ち着きや冷静さをアピールしたい場面では、グレーのスーツで謙虚さを演出しましょう。
茶色

ビジネスシーンで揺るぎない信念と優しさを演出したいときには、茶色のスーツがおすすめです。
茶色は土の色であり、大地を想起させるため、見る人に安心感や落ち着きを与える効果があります。
この色がもたらす穏やかさと安定感は、相手に「頼りがいがある人物」という印象を自ずと与えます。
たとえば、新規プロジェクトのキックオフ会議や社内外の懇親会などで茶色のスーツを着用すると、「物事に動じず落ち着いて対応できる」「チームをまとめる包容力がある」という印象を持たれやすくなります。
頼もしさと優しさの両方を相手に伝えたい場面では、ぜひ茶色のスーツを選んでみてください。
メンズスーツおすすめショップ3選

ビジネスで好印象なスーツを選ぶために、種類が豊富で自分に合ったサイズが選びやすく、3万円以内で前肩縫製、毛芯仕立の取り扱いのあるショップでの購入がおすすめです。
アイテムが充実し、かつ3万円以内で前肩縫製・毛芯仕立ての取り扱いのあるメンズショップは、以下の通りです。
THE SUIT COMPANY

【価格】20,900円(税込)〜
THE SUIT COMPANYは、日本人800人分の体型データをもとに独自開発した型紙を採用し、着心地とシルエットの美しさを追求したスーツを展開しています。
細身ながらもしっかりストレッチが効き、動きやすさとシワ耐性を兼ね備えた一着です。
ビジネスでハードに着用する方にもおすすめできる機能性を備えています。

ORIHICA

【価格】19,800円(税込)~
ORIHICAは豊富なサイズ展開が特徴で、低価格帯でも前肩縫製を採用した着心地の良いスーツを多数揃えています。
3万円前後の予算であれば、毛芯仕立てのモデルもラインナップされており、コスパの高い一着を手に入れやすいのが魅力です。
シルエットはタイトに設計され、ウエスト周りが美しくシェイプされたデザインは、特に20代・30代の若手ビジネスマンに人気を博しています。
スーツのシルエットにこだわりたい方におすすめのブランドです。

オンリー(ザ・スーパースーツストア)

【価格】30,800円(税込)〜
ONLY(ザ・スーパースーツストア)は、有名ブランドのインポート生地やオリジナル生地を採用し、体に吸い付くようなフィット感を実現するスーツを展開しています。
ディテールにもこだわり、スタイリッシュでおしゃれなデザインが豊富です。価格帯は30,800円(税込)〜41,800円(税込)のラインに加え、イタリア「CANONICO」「MARZOTTO」などのプレミアムライン52,800円(税込〜も揃います。
個性的な着こなしを楽しみたい方や、細部までデザイン性にこだわりたいビジネスマンに最適です。

メンズスーツの見栄えをよくするシャツとネクタイの選び方

スーツの見栄えをよりよく見せるためのシャツとネクタイも大切なアイテムです。
好印象を与えるシャツとネクタイを選ぶテクニックを紹介します。
シャツ選びのテクニック

シャツを選ぶ際は、スーツの襟がシャツの襟にわずかに重なるデザインを選ぶことが重要です。
スーツの襟がシャツに上手く乗ると、首元がすっきり見えて小顔効果が期待できます。
そのためには、シャツの襟の形状や大きさとスーツの襟の開き具合をバランスよく合わせる必要があります。
襟越しが高めのシャツやワイドカラーのシャツを選ぶと、スーツの襟が自然にシャツの襟にかかりやすく、首元が引き締まった印象になります。
ネクタイ選びのテクニック

ネクタイは幅に注目して選びます。
スーツ姿で相手の視線が一番が集まるのはVゾーンと呼ばれる上着の襟と襟の間のVの形の部分です。
ネクタイの幅をスーツの襟の幅と同じものにするとVゾーンのバランスが整うため、見た目が控えめで上品に見えます。
スーツがトラッド系ならネクタイの幅は太め、スーツがモード系ならネクタイは細めのものを選ぶとバランスがよくなります。
まとめ
メンズスーツには、長い歴史のなかで築かれた洗練された着こなしのノウハウが存在します。
これらを身につけるだけで、第一印象は大きく向上します。
まずはサイズフィッティング、仕立ての良さ、色の印象、シャツとネクタイのバランスを意識してスーツを選びましょう。
高額なスーツでなくとも、着こなしの基本を守れば、清潔感と信頼感を備えたビジネスマンになれます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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