住宅ローン控除はローン残高に応じて税の還付が受けられる制度で、マイホームを購入する人にとっての強い味方です。
しかし、いざ住宅ローン控除の還付を受けてみると、思ったよりも少ないと感じている人が多くいます。
そこでこの記事では住宅ローン控除の仕組みについて詳しく解説し、住宅ローン控除がなぜ思ったよりも少ないのかを解き明かします。
また、住宅ローンを組む上で気になる住宅ローン控除の還付時期もお伝えします。
住宅ローン控除について正しく理解し、マイホームの購入計画にお役立てください。
住宅ローン控除を受けるための条件と還付時期
住宅ローン控除を受けるためには、一定の条件が必要です。
住宅ローン控除に必要な条件と、還付がどのようなかたちで受けられるのかについて解説します。
住宅ローン控除を受けるための条件と必要書類
住宅ローン控除を受けるには条件があります。
以下の条件を全て満たしていないと住宅ローン控除は受けられません。
- 住宅ローンの返済期間が10年以上であること
- 自分自身の居住する住宅であること
- 住宅取得後6カ月以内に入居し居住し続けていること
- その年の合計所得金額が2,000万円以下であること
- 床面積が50平米以上であること(年収1000万円以下の場合は40平米以上であること)
- 床面積の1/2以上が居住スペースであること
住宅ローン控除は、マイホームをもつ一般的な収入の方を対象に制度設計されています。
なので、不動産投資などの自分が住む住宅以外には使えません。
また、自宅で事業を営む場合、居住スーペースが半分以上であることが住宅ローン控除の条件。
住宅ローン控除はあくまでも、マイホームを取得しやすくするための減税制度なのです。
住宅ローン控除の申請に必要な書類
サラリーマンの方でも住宅を購入した翌年に、確定申告で住宅ローン控除の申請が必要です。
2年目以降は勤務先の年末調整で申請できるので確定申告は必要ありません。
サラリーマンの方の最初の住宅ローン控除に必要な書類には、以下のものがあります。
- 確定申告書
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 本人確認書類
- 建物・土地の登記事項証明書
- 建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)の写し
- 源泉徴収票
- 住宅ローン残高証明書
- 耐震基準適合証明書または住宅性能評価書の写し(該当物件のみ)
- 認定長期優良住宅・認定炭素住宅の認定書の写し(該当物件のみ)
確定申告
確定申告書にはAとBと2種類ありますが、サラリーマンの方はAを使用します。
近くの税務署または国税庁のサイトから入手可能。
勤務先で年末調整を行っている方であっても住宅ローン控除を受けるには、初年度に確定申告書の提出が必要です。
住宅借入金等特別控除額の計算明細書
住宅ローン控除を受けるための書類です。
住宅ローン控除の対象となる住宅の価格や年末の住宅ローン残高などを計算する書類。
住宅借入金等特別控除額の計算明細書は、契約書や登記事項証明書を参考にして記入してください。
本人確認書類
マイナンバーカードまたは通知カードのコピーを提出します。
マイナンバー通知カードの場合は運転免許証など本人を証明する写真付きの書類のコピーも必要です。
マイナンバーカードや通知カードがない場合はマイナンバーが記載された住民票でも可。
建物・土地の登記事項証明書
建物・土地登記事項証明書は所有者や住所、建物の広さ、取得した土地の面積、さらに住宅ローン借入額などが載っている書類です。
原本を提出します。
法務局に申請して入手してください。
建物・土地の不動産売買契約書(工事請負契約書)の写し
マンションを購入した方は建物の不動産売買契約書、分譲住宅を土地付きで購入した方は建物・土地の不動産売買契約書を用意してください。
土地の購入がなく住宅を建築した方は工事請負契約書が必要で、土地を購入して新築の住宅を建てた方は工事請負契約書と土地の不動産売買契約書の両方が必要です。
購入者と不動産会社の間で契約を交わした書類で、いずれの書類もコピーでOK。
源泉徴収票
住宅ローン控除を受ける年(申請日の前年)の源泉徴収票を用意します。
年末か年明けに勤めている会社が発行します。
源泉徴収票は原本が必要。
住宅ローン残高証明書
住宅ローン残高証明書は金融機関から発行され、年末の住宅ローン残高が記載されています。
10月から12月の間に送られてくることが多いです。
原本を提出します。
耐震基準適合証明書または住宅性能評価書の写し(該当物件のみ)
耐震基準適合証明書と住宅性能評価書は、購入した中古物件が一定の耐震基準を満たしていることを証明します。
耐震基準を満たしている中古物件は、住宅ローンの上限額が優遇されます。
契約した不動産会社から入手し、コピーを提出。
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅などの認定通知書の写し(該当物件のみ)
- 認定長期優良住宅
- 認定低炭素住宅
- 特定エネルギー消費性能向上住宅
- エネルギー消費性能向上住宅
以上4種類の二酸化炭素排出量が少ない住宅の認定通知書を提出すると、住宅性能に応じて住宅ローン控除上限額の優遇が受けられます。
契約した建築会社から入手し、コピーを提出します。
住宅ローン控除の必要書類は種類が多いので、早めに準備しましょう。
住宅ローン控除申請は、住宅を購入した翌年の1月からできます。
3月15日までに申告を行うのが一般的です。
住宅ローン控除の還付時期
住宅ローン控除の還付時期がいつなのかについて解説します。
住宅ローン控除の還付時期は以下の通りです。
【住宅ローン控除の還付時期】
- e-Taxで電子申告した場合・申告から3週間程度
- 税務署に書類で申告した場合・1カ月から1カ月半程度
- サラリーマンの2年目以降は、12月または1月の給与に反映
住宅ローン控除で所得税の還付を受けるための申告方法は大きく2種類あります。
税務署に直接書類で申告する方法とe-Taxで電子申告する方法。
書類で申告するよりも、e-Taxで申告する方が還付金を早く受け取れます。
サラリーマンの方なら初年度に確定申告をしておけば、翌年からは年末調整で住宅ローン控除が受けられます。
住宅ローンでマイホームを購入した方は、必ず翌年に住宅ローン控除の手続きを行ってください。
住宅ローン控除額シミュレーション
住宅ローン控除が実際どのくらい受けられるのかを解説します。
住宅ローン控除が思ったより少ない理由
住宅ローン控除の還付金が思ったよりも少ないと感じることについて解説します。
住宅ローン控除の還付金を期待して「4月に納税通知書が届く固定資産税の支払いに当てようと考えていたのに、思ったよりも少なくてがっかりした」という方は少なくありません。
それではなぜ住宅ローン控除の還付金は期待よりも少ないことがあるのでしょうか。
その理由は2つあります。
- 住宅ローン控除には上限がある
- 源泉徴収されている所得税以上の還付金はない
住宅ローン控除の還付金が思ったよりも少ない理由を詳しく解説します。
住宅ローン控除には限度額がある
住宅ローン控除は年末のローン残高の0.7%が戻ってくるという制度です。
例えばローン残高が4,500万円あった場合、0.7%だと31万5,000円が最大で控除されるはず。
しかし、住宅ローン控除に適用されるローン残高の上限額が、物件の省エネ性能によって設定されているのです。
【物件タイプ別住宅ローン控除限度額】
物件タイプ | 住宅ローン残高上限 | 1年間の控除額 |
新築・認定住宅 | 5,000万円
(4500万円) |
35万円
(31.5万円) |
新築・ZEH水準省エネ住宅 | 4500万円
(3,500万円) |
31.5万円
(24.5万円) |
新築・省エネ基準適合 | 4,000万円
(3,000万円) |
28万円
(21万円) |
新築・その他一般住宅 | 3000万円
(0円) |
21万円
(0円) |
中古・認定住宅 | 3,000万円 | 21万円 |
中古・その他一般住宅 | 2,000万円 | 14万円 |
(令和4年度国土交通省税制改正概要を参考に作成・2024年から制度変更でカッコ内の金額に減額されます)
購入した物件タイプが新築の省エネ基準適合住宅なら、住宅ローン残高の上限額は4000万円なので住宅ローン控除額は28万円が上限です。
このように住宅ローン控除には住宅の省エネ性能に合わせてローン残高の上限が設けられています。
その結果ローン残高のわりに住宅ローン控除が受けられない場合があるのです。
源泉徴収されている所得税以上の還付金はな
住宅ローン控除の金額が28万円のはずなのに、住宅ローンの還付金が28万円よりも少ない場合があります。
それは、源泉徴収で納めた所得税が28万円に達していないからです。
仮に所得税が21万円なら、住宅ローン控除の還付金は21万円以上にはなりません。
しかし、所得税で控除しきれない部分(この場合だと28万円から還付金21万円を引いた7万円)は、翌年の住民税から控除される仕組みになっています。
住民税から控除する場合は、納めている住民税の1/2か9万7,500円のどちらか低い方が上限。
例えば、住民税を31万円納めているならその1/2は15万5,000円なので、上限は9万7,500円が適用され、所得税で控除しきれない金額の7万円が翌年の住民税から減額されるのです。
このように住宅ローン控除にはローン残高の上限額があるのと、納めた所得税以上に還付金がないので、予想した金額よりも少なくなってしまうのです。
住宅ローン控除額がいくらなのかをシミュレーション
実際に住宅ローンがいくらになるのかシミュレーションします。
事例①
- 借入額:3,000万円
- 入居年:令和5年
- 住宅の種類:新築ZEH水準省エネ住宅
- 借入条件:金利1.722(固定)・返済期間35年
- 年収:550万円
経過年 | 住宅ローン控除額 |
1年目 | 17万4,000円 |
2年目 | 17万4,000円 |
3年目 | 17万4,000円 |
4年目 | 17万4,000円 |
5年目 | 17万4,000円 |
6年目 | 17万4,000円 |
7年目 | 17万4,000円 |
8年目 | 17万2,000円 |
9年目 | 16万7,000円 |
10年目 | 16万2,000円 |
11年目 | 15万7,000円 |
12年目 | 15万1,000円 |
13年目 | 14万6,000円 |
(価格.com住宅ローン控除シミュレーションで計算)
年収550万円の方が3,000万円、返済期間35年の住宅ローンを組んで新築のZEH水準省エネ住宅を購入した場合の住宅ローン控除額は、1年目から7年目までは17万4,000円控除されます。
控除は最大13年間続き、住宅ローン控除はトータルで217万3,000円受けられます。
事例②
- 借入額:4,500万円
- 入居年:令和5年
- 住宅:新築省エネ基準適合住宅
- 借入条件:金利1.722(固定)・返済期間25年
- 年収:650万円
経過年 | 住宅ローン控除額 |
1年目 | 22万円 |
2年目 | 22万円 |
3年目 | 22万円 |
4年目 | 22万円 |
5年目 | 22万円 |
6年目 | 22万円 |
7年目 | 22万円 |
8年目 | 22万円 |
9年目 | 21万6,000円 |
10年目 | 20万4,000円 |
11年目 | 19万2,000円 |
12年目 | 18万円 |
13年目 | 16万8,000円 |
(価格.com住宅ローン控除シミュレーションで計算)
年収650万円の方が4,500万円、返済期間25年の住宅ローンを組んで新築の省エネ基準適合住宅を購入した場合の住宅ローン控除額は、1年目から8年目までは22万円控除されます。
控除は最大13年間続き、住宅ローン控除はトータルで272万円受けられます。
住宅ローン控除は納めた所得税が戻ってくる制度なので、年収の高い方ほど控除額が多い傾向です。
まとめ|住宅ローン控除額が思ったよりも少ない理由について解説
住宅ローン控除はマイホームを購入する方の強い味方です。
仕組みをしっかり理解して申請を正しく行い、税制の優遇措置を享受しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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